無教
無教マニフェスト
1、ベネターの理論は一部の隙もなく正しい。
2、ただ一つだけ欠陥がある。出生を否定するだけで生きてる人間を対象にしていないことだ。
3、非存在は存在に勝る。現在生きている人間も無になることが望ましい。ただその際、恐怖感を抱かせてはならない。
「準備完了です」助手のような恰好をした人が言った。
「やっとか…」黒づくめのマッドサイエンティスト風の男が言う。
ここは「無教」のアジト。「無」を崇拝する宗教で、全人類、全生物の無を目指している。生物には「感覚器官」があるから「苦痛」が生まれる。苦痛がある生を生きるぐらいなら、無のほうがいい。反出生主義という思想もあるらしいが、奴らは「ぬるい」。もっと積極的に無を推進すべきだ。無こそ救済であり、出生はもちろん悪だが、生を恐怖なく無にすることは「善」である。
「世界中にヘリコプターを配置しました。アメリカにもアフリカにも、日本にも、イスラエルにも。このステルスヘリコプターで、この「O-157」を散布すれば、0,0000001mg吸うだけで、即死します。恐怖を感じる暇もありません」弟子風の男が言う。
「ここまで、長かったな…。でもこれで人類を救うことができる。全教団員に告ぐ!今すぐO-157を散布せよ!」
薬の効果は絶大だった。世界中にしかけたスプリンクラーとヘリからの散布で、1秒のうちに世界人口の90パーセントが死滅した。そして2秒後には、ほぼすべての人類が死滅した。
「やったな。これは我々の「存在」への勝利だ!祝杯をあげよう」
教団員を全て集結させて、宴が続いた。
「で、これからどうする?」ボスが聞いた。
「僕はまだ死にたくありません」
「私も」
「実を言うと、私も死ぬのは怖い」ボスが俯きながら言う。
「あとは余生だと思って、自然死するまで生という苦痛を味わおうではないか」
「賛成!」「賛成!」
もともと同じ教団に所属していた人達だけあって、牧歌的な生活が続いた。世界人類がいなくなることで、戦争も、環境問題も、いがみ合いもなくなり、平和な日々が続いた。太陽の下で、元無教の人々は仲睦まじく暮らした。
「これが生だったのか…」元ボスが呟く。
これが後に言う、シュメール文明の起源の物語である。
1、ベネターの理論は一部の隙もなく正しい。
2、ただ一つだけ欠陥がある。出生を否定するだけで生きてる人間を対象にしていないことだ。
3、非存在は存在に勝る。現在生きている人間も無になることが望ましい。ただその際、恐怖感を抱かせてはならない。
「準備完了です」助手のような恰好をした人が言った。
「やっとか…」黒づくめのマッドサイエンティスト風の男が言う。
ここは「無教」のアジト。「無」を崇拝する宗教で、全人類、全生物の無を目指している。生物には「感覚器官」があるから「苦痛」が生まれる。苦痛がある生を生きるぐらいなら、無のほうがいい。反出生主義という思想もあるらしいが、奴らは「ぬるい」。もっと積極的に無を推進すべきだ。無こそ救済であり、出生はもちろん悪だが、生を恐怖なく無にすることは「善」である。
「世界中にヘリコプターを配置しました。アメリカにもアフリカにも、日本にも、イスラエルにも。このステルスヘリコプターで、この「O-157」を散布すれば、0,0000001mg吸うだけで、即死します。恐怖を感じる暇もありません」弟子風の男が言う。
「ここまで、長かったな…。でもこれで人類を救うことができる。全教団員に告ぐ!今すぐO-157を散布せよ!」
薬の効果は絶大だった。世界中にしかけたスプリンクラーとヘリからの散布で、1秒のうちに世界人口の90パーセントが死滅した。そして2秒後には、ほぼすべての人類が死滅した。
「やったな。これは我々の「存在」への勝利だ!祝杯をあげよう」
教団員を全て集結させて、宴が続いた。
「で、これからどうする?」ボスが聞いた。
「僕はまだ死にたくありません」
「私も」
「実を言うと、私も死ぬのは怖い」ボスが俯きながら言う。
「あとは余生だと思って、自然死するまで生という苦痛を味わおうではないか」
「賛成!」「賛成!」
もともと同じ教団に所属していた人達だけあって、牧歌的な生活が続いた。世界人類がいなくなることで、戦争も、環境問題も、いがみ合いもなくなり、平和な日々が続いた。太陽の下で、元無教の人々は仲睦まじく暮らした。
「これが生だったのか…」元ボスが呟く。
これが後に言う、シュメール文明の起源の物語である。
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