念仏者と虚無主義者の対話
「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」
『なんだ、久しぶりに来たら、なんだそれは、念仏か?お前も落ちぶれたものだな。びっくりだよ。宗教なんかに凝ってるのか?』
「そうだよ、君も一緒にどうだい、なんまんだぶ」
『絶対に嫌だね。カミュとドーキンスを信奉してたお前に一体何があったんだよ。引きこもりすぎて頭が変になっちまったのか?俺はよく知らないんだが、念仏すると一体どういう功徳があるんだ?』
「念仏すると、浄土へ行けるのさ」
『そりゃ結構な話だな。じゃあ俺も一つ。南無阿弥陀仏。これでいいのか?』
「それじゃ無理だよ。阿弥陀仏を信じてなきゃ駄目なんだ。」
『じゃあ俺には一生無理だね。なあお前、ほんとにどうしたんだ?死後は無なんじゃなかったのかよ。人間は遺伝子の乗り物じゃなかったのか?』
「僕は何も知らないよ。南無阿弥陀仏。」
『じゃあ教えてやるよ。人間の同一性はな、記憶で担保されてるんだ。だから死んで、脳みその海馬がイカれちまうと、記憶も全部なくなる。ということはその人はこの世からもあの世からもいなくなるんだ。だから輪廻なんてものもない。記憶がぶち壊れるんだから。』
「そうかそうか。そういう考え方もあるんだな。」
『お前が言ってたことじゃないか。人間の精神は脳に完全に依拠している。脳が死ねば———無だ。』
「そんなことはないさ、ご信心を頂けば、極楽鳥の飛んでいる浄土へ往生できるんだ。」
『迷信だね。信じれば事実になるのは当たり前じゃないか。あのな、そりゃ信じれば事実になるよ。でもそれは信じている人にしか事実じゃないんだ。現に世界にたくさんの宗教があって、それぞれの信じている事実があるじゃないか。信じれば事実だよ。俺も死後は無だと信じているから事実だ。信じればなんでも事実だよ。でもそれはお前の主観の中だけの話だ。』
「君はこの南無阿弥陀仏が聞こえないのかい。」
『聞こえるとも』
「これはお前を助けるぞと呼んでいる呼び声なんだ」
『馬鹿々々しい。お前が喋っているだけじゃないか。そもそもその阿弥陀ってのはどんな神様なんだ。』
「神様じゃなくて、仏だよ。哲学的に言えば、真如だね。」
『真如?』
「真理そのものという意味さ。」
『人間が、真理そのものを仮定したんだろ。』
「禅などでは、実際に体得している人もいるけどね」
『それは脳の変性意識だろう。ドラッグなどでも同じ状態になるんだから』
「ああいえばこういう奴だなあ。君は南無阿弥陀仏が聞こえないのかい」
『聞こえないね』
「可哀そうな奴だな」
『お前のほうが、可哀そうだよ。死ねば無だ。お前は逃げているだけだ。現実逃避だ。背後世界なんかないんだよ、お前の好きなニーチェも言ってただろ』
「ニーチェか、懐かしいな。もう僕は疲れたよ。なんまんだぶ、なんまんだぶ。」
『勝手にしてくれ。俺は少し見損なったよ。じゃあな、お元気で。人間は、進化のアルゴリズムで生まれた、遺伝子の乗り物だよ。』
「そうかい、お前も早く気づいてくれよ、南無阿弥陀仏」
『なんだ、久しぶりに来たら、なんだそれは、念仏か?お前も落ちぶれたものだな。びっくりだよ。宗教なんかに凝ってるのか?』
「そうだよ、君も一緒にどうだい、なんまんだぶ」
『絶対に嫌だね。カミュとドーキンスを信奉してたお前に一体何があったんだよ。引きこもりすぎて頭が変になっちまったのか?俺はよく知らないんだが、念仏すると一体どういう功徳があるんだ?』
「念仏すると、浄土へ行けるのさ」
『そりゃ結構な話だな。じゃあ俺も一つ。南無阿弥陀仏。これでいいのか?』
「それじゃ無理だよ。阿弥陀仏を信じてなきゃ駄目なんだ。」
『じゃあ俺には一生無理だね。なあお前、ほんとにどうしたんだ?死後は無なんじゃなかったのかよ。人間は遺伝子の乗り物じゃなかったのか?』
「僕は何も知らないよ。南無阿弥陀仏。」
『じゃあ教えてやるよ。人間の同一性はな、記憶で担保されてるんだ。だから死んで、脳みその海馬がイカれちまうと、記憶も全部なくなる。ということはその人はこの世からもあの世からもいなくなるんだ。だから輪廻なんてものもない。記憶がぶち壊れるんだから。』
「そうかそうか。そういう考え方もあるんだな。」
『お前が言ってたことじゃないか。人間の精神は脳に完全に依拠している。脳が死ねば———無だ。』
「そんなことはないさ、ご信心を頂けば、極楽鳥の飛んでいる浄土へ往生できるんだ。」
『迷信だね。信じれば事実になるのは当たり前じゃないか。あのな、そりゃ信じれば事実になるよ。でもそれは信じている人にしか事実じゃないんだ。現に世界にたくさんの宗教があって、それぞれの信じている事実があるじゃないか。信じれば事実だよ。俺も死後は無だと信じているから事実だ。信じればなんでも事実だよ。でもそれはお前の主観の中だけの話だ。』
「君はこの南無阿弥陀仏が聞こえないのかい。」
『聞こえるとも』
「これはお前を助けるぞと呼んでいる呼び声なんだ」
『馬鹿々々しい。お前が喋っているだけじゃないか。そもそもその阿弥陀ってのはどんな神様なんだ。』
「神様じゃなくて、仏だよ。哲学的に言えば、真如だね。」
『真如?』
「真理そのものという意味さ。」
『人間が、真理そのものを仮定したんだろ。』
「禅などでは、実際に体得している人もいるけどね」
『それは脳の変性意識だろう。ドラッグなどでも同じ状態になるんだから』
「ああいえばこういう奴だなあ。君は南無阿弥陀仏が聞こえないのかい」
『聞こえないね』
「可哀そうな奴だな」
『お前のほうが、可哀そうだよ。死ねば無だ。お前は逃げているだけだ。現実逃避だ。背後世界なんかないんだよ、お前の好きなニーチェも言ってただろ』
「ニーチェか、懐かしいな。もう僕は疲れたよ。なんまんだぶ、なんまんだぶ。」
『勝手にしてくれ。俺は少し見損なったよ。じゃあな、お元気で。人間は、進化のアルゴリズムで生まれた、遺伝子の乗り物だよ。』
「そうかい、お前も早く気づいてくれよ、南無阿弥陀仏」
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