念仏者と虚無主義者の対話 | 人生入門

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哲学書読書計画
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丸山圭三郎 プラトン アリストテレス エピクテトス デカルト ロック バークリー ヒューム スピノザ ラカン ニーチェ パスカル キルケゴール ショーペンハウアー ハイデガー ウィトゲンシュタイン プロティノス 龍樹 孔子 老子 荘子 クリシュナムルティ マルクス・ガブリエル マックス・シュティルナー ウィリアム・ジェイムズ シオラン ベルクソン ライプニッツ 九鬼周造 カント シェリング 波多野精一 メルロ・ポンティ ニーチェ ヘーゲル マルクス サルトル レヴィナス

今年と来年中に読むもの
西田幾多郎 フィヒテ バタイユ アウグスティヌス トマス・アクィナス パウル・ティリッヒ カール・バルト ガザーリー 清沢満之 曽我量深 金子大栄 安田理深

再来年中に読むもの
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念仏者と虚無主義者の対話

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」

『なんだ、久しぶりに来たら、なんだそれは、念仏か?お前も落ちぶれたものだな。びっくりだよ。宗教なんかに凝ってるのか?』

「そうだよ、君も一緒にどうだい、なんまんだぶ」

『絶対に嫌だね。カミュとドーキンスを信奉してたお前に一体何があったんだよ。引きこもりすぎて頭が変になっちまったのか?俺はよく知らないんだが、念仏すると一体どういう功徳があるんだ?』

「念仏すると、浄土へ行けるのさ」

『そりゃ結構な話だな。じゃあ俺も一つ。南無阿弥陀仏。これでいいのか?』

「それじゃ無理だよ。阿弥陀仏を信じてなきゃ駄目なんだ。」

『じゃあ俺には一生無理だね。なあお前、ほんとにどうしたんだ?死後は無なんじゃなかったのかよ。人間は遺伝子の乗り物じゃなかったのか?』

「僕は何も知らないよ。南無阿弥陀仏。」

『じゃあ教えてやるよ。人間の同一性はな、記憶で担保されてるんだ。だから死んで、脳みその海馬がイカれちまうと、記憶も全部なくなる。ということはその人はこの世からもあの世からもいなくなるんだ。だから輪廻なんてものもない。記憶がぶち壊れるんだから。』

「そうかそうか。そういう考え方もあるんだな。」

『お前が言ってたことじゃないか。人間の精神は脳に完全に依拠している。脳が死ねば———無だ。』

「そんなことはないさ、ご信心を頂けば、極楽鳥の飛んでいる浄土へ往生できるんだ。」

『迷信だね。信じれば事実になるのは当たり前じゃないか。あのな、そりゃ信じれば事実になるよ。でもそれは信じている人にしか事実じゃないんだ。現に世界にたくさんの宗教があって、それぞれの信じている事実があるじゃないか。信じれば事実だよ。俺も死後は無だと信じているから事実だ。信じればなんでも事実だよ。でもそれはお前の主観の中だけの話だ。』

「君はこの南無阿弥陀仏が聞こえないのかい。」

『聞こえるとも』

「これはお前を助けるぞと呼んでいる呼び声なんだ」

『馬鹿々々しい。お前が喋っているだけじゃないか。そもそもその阿弥陀ってのはどんな神様なんだ。』

「神様じゃなくて、仏だよ。哲学的に言えば、真如だね。」

『真如?』

「真理そのものという意味さ。」

『人間が、真理そのものを仮定したんだろ。』

「禅などでは、実際に体得している人もいるけどね」

『それは脳の変性意識だろう。ドラッグなどでも同じ状態になるんだから』

「ああいえばこういう奴だなあ。君は南無阿弥陀仏が聞こえないのかい」

『聞こえないね』

「可哀そうな奴だな」

『お前のほうが、可哀そうだよ。死ねば無だ。お前は逃げているだけだ。現実逃避だ。背後世界なんかないんだよ、お前の好きなニーチェも言ってただろ』

「ニーチェか、懐かしいな。もう僕は疲れたよ。なんまんだぶ、なんまんだぶ。」

『勝手にしてくれ。俺は少し見損なったよ。じゃあな、お元気で。人間は、進化のアルゴリズムで生まれた、遺伝子の乗り物だよ。』

「そうかい、お前も早く気づいてくれよ、南無阿弥陀仏」

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