ハイデガーVSパスカル | 人生入門

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ハイデガーVSパスカル

 パスカルも、ハイデガーも、「実存的覚醒」の契機は結構似ていると思う。それは「虚無」であったり「死」であったりが契機となる。

 その根本契機に会う気分が、2人で少しずれる。ハイデガーは「不安」であり、パスカルは「退屈」である。不安は現存在(人間)から、世界の意義がなくなる「天啓」といったものだろう。普段慣れ親しんでいる世界、習慣化された世界から、意義がはぎとられて、「無」が露出する。この気分が人間を真に目覚めさせる。
 パスカルの場合は「退屈」である。「人間の不幸は一人で部屋にじっとしていられないことから始まる」と言ったように、人間は退屈になると、「虚無」で「惨め」な自分を直視しなければならなくなる。

 そこから逃避する手段として、ハイデガーは空談、好奇心、曖昧性を挙げているが、これはパスカルとほぼ同じだ。パスカルもお喋りや好奇心で「気晴らし」をし、人間の本当の実存を隠す人間を糾弾している。

 逃避をせずに、気分に被投された結果はどうなるか?
 ハイデガーの場合は、「有限性を意識した勇気」と言っていいだろう。死を先駆けることによって、「己だけに関係する、有象無象の偶然性をはぎ取った可能性」が露出してくる。死は代理されない。だから自分だけに関係する。死は追い越すことができない。だから有象無象の偶然的な可能性は排除される。「本当の自分自身として生きる可能性」が抽出されてくる。
 パスカルの場合、退屈から、虚無で惨めな自分が透明に見えるようになるだけだ。でもそれが「本当」の自分だ。人間は虚無で惨めなものだ。パスカルの目から見ると、人間は目隠しをして絶壁に走っている人だし、死刑が確定している死刑囚である。そして最後は、棺桶の上に土をハラリと乗せられて、それで、おしまい。逃避をしないことによって露呈されるこの「虚しさ」から逃げない。そこから信仰が導かれてくる。虚しさを癒すのは信仰しかない。

 僕は完全にパスカル派だ。でもイケイケのユーチューバーが、「人生限られてるんだからやりたいことやらなくちゃ損だぜ!」とか言ってるの見たことあるので、ハイデガー派の人もいるのかもしれない。大体の人は「気晴らし」で逃避をしていると2人とも言っているけれど、ハイデガーになるにしても、パスカルになるにしても、せめて「有限性」や「死」から眼を背けない「本当」が出てくる時間はみんな持ってほしいと思う。

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