神なき人間の惨めさ | 人生入門

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再来年中に読むもの
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神なき人間の惨めさ

 神なき人間は全員惨めであるというパスカルの主張に、100%同意する。無限大の宇宙の中の塵、死刑台を待っている死刑囚、惨めさから目をそらすために気晴らしをする王、全てが全く正しい。生まれて老いて病んで死ぬ。神の王国は到来しない。無目的に時間は進んでいき、待っているのは老いと病と死。東京の電車に乗れば神なき人間がどれだけ惨めなのかが分かる。なんの目的もなく労働し、なんの目的もなく家に帰り、なんの目的もなく死ぬ。生に意味も目的もない。だから気晴らしをする。「人生は死ぬまでの暇つぶし」という格言があるが、これは日本特有なんじゃないかと思う。ここまで信仰心のない国も少ないんじゃないか。11世紀のペルシャの詩に「ルバイヤート」という詩があり、内容は「神がいるかどうかも分からないしどこから来てどこに行くのかもわからない。だから死ぬまで酒を飲もう」というはっちゃけた内容で、1000年も歴史の淘汰を勝ち残ってきた詩にしてはしょうもない気がするが、自分が日本人だから当たり前すぎてしょうもないと思ってしまうのだと思う。この詩集は岩波の好きな本ランキングにも載っていて、どうも日本人好みらしい。どこから来てどこへ行くのかも分からんから、死ぬまで酒を飲もう。
 神なき人間は、全員惨めである。神なき人間には「苦しみ」も無目的である。苦しみは神の「御計らい」や「試練」などではなく、「不条理」だ。神のいない人間にとって、「苦しみ」は自らの準拠枠に回収できない。僕は幼い頃、手術を繰り返したのだが、「なぜ僕が」といった感情に常に襲われていた。神が存在していれば楽である。「神が試練を与えたから」「全ては神の御計らいである」
 惨めな人間は、気晴らしをする。自分の「不条理」から目をそらすために、何かに「ハマる」必要がある。無目的な労働をする苦しみ、パートナーと別れた苦しみ、家族から虐げられた苦しみを頭の片隅に追いやるために、何かにハマる。何かに執着をする。「自分」のこと、「人生」のことを考えたくないので、何かに執着をする。金や性に執着することで「不条理」や「苦しみ」を一時的に忘れることができるが、それは対症療法にしかならない。自分の中にある「絶対的な惨めさ」を克服しない限り、「完全に幸福な人生」にならない限り、「不条理」は自分に何度も牙をむく。神がいない人間は、人生の不条理から目をそらすのではなく、人生の根幹から治療しなければならない。

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